『キッズ(だけにじゃもったいない)ブックス』 より ニューヨーク、ハーレムに住むキャシーとその近所の人々は、夜になると「タールビーチ」に行く。そこはタールが敷き詰められた彼女たちが住むビルの屋上。スイカやフライドチキン、ビールを持ち寄って大人たちはトランプに興じる。キャッシーは星の降るこの「ビーチ」でとても自由だ。空の星がキャッシーを包んでどこへでも連れていってくれる……。物質的豊かさには恵まれていなくとも、心の自由は満天の星ほど美しい。空から見下ろした1930、40年代のハーレムのあちこちには、キャッシーのような子どもたちが黒々としたタールの「ビーチ」に体をのばし、その空のように大きな夢を描いていたのだろう。
本書は作者が、母と作った最後のキルト作品に、絵と文章をつけたもので、現在グッゲンハイム美術館の所蔵品になっている。小津安二郎が描いたのは普通の日本と日本人だが、これはそのアフリカ系アメリカ人バージョン、あたり前の生活の美しさが胸を打つ。(え)