Book Description 『What Went Wrong?』につぐ本書で、バーナード・ルイスは今日イスラム世界を支配している怨念がいかにして形成されテロリズムに発展していったか、歴史的起源にさかのぼって検証している。彼が視線を向けているのは、政治的イスラムの神学的起源である。ワハブ派急進主義とサウジのオイルマネーがイスラム世界に及ぼした影響力を見ながら、イラン、エジプト、サウジアラビアに台頭した戦闘的イスラムの伸長を跡づけていく。
『The Crisis of Islam』は1300年に及ぶ歴史を広く観望しているが、とくにイスラエル建国、冷戦、イラン革命、ソ連のアフガン敗退、湾岸戦争、9.11同時多発テロなど20世紀の画期的事件と、今日起きている暴力抗争の相関図を明示している。
イスラム諸国の西欧に対する敵意には長く多様な歴史があるが、アメリカに敵意が集中するようになったのは最近のことである。自爆テロ信仰も新しい。イスラム世界では神聖な過去への回帰志向から近代性をドグマ的に否定する人々が増えている。バーナード・ルイスは、中東史の逆流を、利用する側の論理から見事に解きほぐしながら、その理由を解き明かすのである。ビン・ラディンは何を言おうとしているのか、彼の殺しのメッセージはなぜかくも広くイスラム世界に受け入れられているのか。The George Polk 賞を受賞したニューヨーカー誌の記事を基にした『The Crisis of Islam』は、その理由を知るうえで重要な1冊である。