Amazon.co.jp グルダのピアノとアバド指揮ウィーン・フィルによる、モーツァルトのピアノ協奏曲を聴く喜び、それは至上の幸福に震えるような体験である。第25番は、曲頭から構えが大きい。高貴な気品を持ってエレガントに演奏されなければ、この曲のかけがえのない魅力はだいなしになってしまうが、ここでのウィーン・フィルの演奏はまさに極上で、弦のつややかな響きはえもいわれぬ美しさである。グルダのピアノはかっちりとした楷書体のモーツァルト。インプロヴィゼーションやジャズに類稀な才能を発揮するグルダだからこそ、これほどフォーマルな演奏が完璧に決まるのであろう。第1楽章の第2主題など、音楽における「優しさ」の最高の表現とすら思えてくる。
第27番は、あわてずさわがず、しっとりと静かに進んでいく弱音の美しさが無類である。「春へのあこがれ」をうたう第3楽章は、あくまで控えめに、しかし驚くべき天上の妙音が次々と繰り出される。どんなパッセージでも、ひとつひとつの音は、芯から神々しく光り輝いている。
第20番と第21番をカップリングしたもう1枚同様、真のモーツァルト弾きとウィーン・フィルの共演ならではの、永遠の名盤と呼ぶにふさわしいディスクである。(林田直樹)